東京昆虫館のブログ

日々の昆虫関係の出来事を綴っています

キンカンの花

鉢植えのキンカンが先週から開花している。早朝に水やりのためベランダに出ると、芳香が漂う。

 

今年はミカンコナカイガラムシの発生も無く、アオドウガネに根を食われてもいないようなので、蕾がたくさんついた。

 

まだ開花していない枝もこれから咲く。秋に黄色い実がたくさんなるのが楽しみ。

イボタサビカミキリ羽化

1週間ほど前の7月7日、帰宅して材箱を見ると、青梅市御岳山の麓で採ってきたテイカカズラの陰から触角が伸びているのに気づいた。

 

イボタサビカミキリ
Sophronica obrioides (Bates,1873)

現地で見つけた幼虫が狙い通り化けてくれた。すでに奥多摩からは御岳山の山の上で記録されており、麓にもいることがわかった。

 

昨年11月に幼虫で見つけた時の様子。採集記はこちら(後半に登場)

 

東京都での本種は、数年前まで高尾山だけで記録されていた。それが2024年に前述の青梅市、2026年にあきる野市で記録されており、小さくて目立たないだけで多摩地域には広く薄く生息しているのかもしれない。

ナツメの苗木

今年5月23日、近所の大きめのホームセンターで苗木を見つけて購入し、ベランダで育てている。

品質は「中国大実ナツメ」。今のところ高さは約150㎝、順調に育っている。

 

ナツメを育ててみようと思ったきっかけは、2023年の中国出張の際に食べた生のナツメ。ゴルフボールくらいの大きさで、リンゴのようだと形容される素朴な味わいがとても気に入った。でも、残念ながら日本では乾燥したものばかりで、生の果実はなかなかお目にかかれない(植物検疫上の理由で生だと輸入禁止)。果実は健康にも良いそうなので、自分で育ててみようと思い立つ。現地では野生種が乾燥した痩せ地に普通に生えているのを見ており、調べてみると栽培種も暑さ寒さ乾燥に強いらしい。これならできるだろうと思った。

 

6月になると花が咲き始めるものの、受粉がうまくいかないのか、ことごとく枯れて落花していく。日本で栽培している様子を紹介したブログなどを参考に、風雨が当たらない場所に移動させ、人工受粉と霧吹きをやってみると、次々と結実していった(梅雨が本格化して蒸し蒸しした日が続いてからは霧吹きしなくても結実は続いた)。

 

開花から結実までの各段階が揃っている枝。受粉に成功した花ではめしべの周囲が黄色から緑色に変化するようだ。その後、子房が膨らんで実の形になる。

 

逆に、受粉に失敗した花はあっという間に枯れていく。

 

これは中国のスーパーで市販されていたナツメ(2023年8月)。22.18元(約500円)で10個以上入っていた。路上販売(量り売り)だともっと安い。

羽化待ちの材

6月も奥多摩探索には出ているものの、日常で蓄積する疲労が抜けず、採集記を書く余力もないまま下旬に突入。

採集記の代わりに、カミキリムシの羽化を心待ちにしている材を紹介。

 

昨年11月に奥多摩でテイカカズラの枯蔓から採集した幼虫が入っている。春に新しい枯蔓に移植してからも順調に育ち、先日見たら蛹化が近いようだった。現時点で奥多摩の記録は1例のみのイボタサビカミキリ、もうすぐ出てくるはず。

 

今年5月に奥多摩から持ち帰った、ホソキリンゴカミキリの幼虫が入っている材。上はフジ類で、群落の中で不自然に折れていたので気づいた。下はヤマハンノキで、林道脇にこれまた不自然に落ちていた枯葉つき枯枝。このカミキリはなかなか縁がなく、何度も飼育に失敗しているので、今度こそは。

 

これは23区内で採ったヤシャブシの枯枝。東京都本土部で1例のみの某カミキリムシがいるとすればここだろうと見当をつけて、部分枯れを中心に集めてきたもの。広範に見られるテツイロヒメカミキリが多数出てくるのは覚悟しているが、それに混じって1頭でも出てきてほしい。

短報/報文の執筆にあたり心がけたいこと

渡辺恭平, 2026. 昆虫愛好家が心得ておきたい分布や生態記録の報告の仕方について ー引用しやすく,引用されやすい報文とするためにー. 神奈川虫報, (218): 5-11.

 

昆虫関係の短報や報文を書くうえで心がけたいことをまとめた報文が、神奈川虫報218号に掲載されている。数多くの報文に接してきた筆者の経験を基に、プロ・アマ問わず気を付けるべきことが網羅的かつ簡潔にまとめられており、文字だけだがとても読みやすく書かれている。

実際に読んでみると、共感することや同意することがとても多かった。私自身、近年の月刊むしや同好会誌の短報を読んで首をかしげる機会が増えていたが、きっと筆者も同じように感じていたのだろう。

同会会員以外にはあまり知られていないとみられるので、以下に少しだけ紹介。

 

引用しやすく、引用されやすい報文を書くには?

1)地域性を考慮して投稿先を選ぶ
ある地域の昆虫の記録を公表する場合、なるべくその地域か近隣地域で発行されている雑誌か,「月刊むし」誌のような全国をカバーしている雑誌、対象分類群を専門に扱う同好会や学会の会報,地域博物館の紀要を選択すべきであろう。

文献記録を調査する立場からすれば、絶対にそうしてほしいと思う。全国の同好会誌の目次をすべてチェックするのは相当な労力がかかるからだ。しかも、総目次が整備されていない同好会の場合は全号を実検するしか手が無い。

 

2) 判りやすいタイトルで書く
同好会誌に掲載されている報文のタイトルには,タイトルから内容がわからないものが案外に多い。例えば「〇〇で採集した興味深い昆虫」とか,「〇〇氏採集の昆虫数種」とかである。

これもそのとおり(私自身、過去にやってしまったが)。記録されている虫が実見しないとさっぱりわからないタイトルは時代を遡るほど多く、令和になってからは滅多にお目にかかれなくなったものの絶滅はしていない。

 

3) 学名や標本収蔵先,標本のデータを原稿中にきちんと明記する
古文書あるいは戦前の古い文献では,現在使われていない和名だけで記録されていることがあるが,現在使われている和名との対応が付かない場合は引用のしようがない。また,標本のデータがなく単に種名の羅列だけの報文があるが,証拠標本を特定する手がかりがなくて困ることが多い。

学名よりも和名の方が安定性は高い場合が多いが、それでも古い文献には現在では想像できない和名が使われていることもある。字数が増えるし面倒かもしれないけど、学名・和名併記が良いと思う。「証拠標本を特定するてがかり」も結構重要。某県で特定の人だけが記録・言及している種について、再検証できた標本は全部が誤同定だったという報文も何篇か出ているからだ。

 

4)報文は簡潔明瞭に,話の流れ(論理構成)を考えて書く
同好会誌や趣味の雑誌には多少の冗長さ,くだけた表現があってもよいと思うが、読んでいると度が過ぎるものがあるのも事実である

同好会誌ではさじ加減が難しいところでもあるが、「度が過ぎる」ものに出会うことは確かにある。老若男女問わず見られるが、傾向として若い方は「短文を連ねただけで接続詞がないので流れがない、調べたことを詰め込みすぎ」、ベテランの方は「脇道に逸れたり重要でない部分を詳しく描写したりする一方、本当に必要な情報を書き忘れがち」という印象。特に後者に関しては、執筆中に次の語句が出てきたら、本当に書くべきことなのか吟味した方が良いと思う。「また」「なお」「ちなみに」「余談だが」「蛇足ながら」

 

5) 図を何のために用いるのかを考える
科学的な報文においては,図は本来内容の説明のために付すものである。美しく作られた標本を見せたい,キレイに撮影した写真を載せたいという思いは尊重するが,そればかりが目的となっているのでは一と思えるような報文も少なくはない

これは載せる媒体にもよるのかなと思う。商業誌だと見栄えは大事。ただ、例えば同好会誌で、誰でも同定できるカブトムシの市町村単位の分布記録を写真つきで載せるのはどうかと思う。

 

6) 短報の粗製濫造は調べる人と調べている人にとって迷惑である
短報はその敷居の低さから,しばしばやたらと発表する人が出てくるという問題がある。まとめて報告できるものを個別に出す例,同じ分野の研究者や愛好家と連携して大きな報文にしたりといったことをせずに,各自バラバラに重箱の隅をつつくような報告を出す例,報告の執筆に直接関係していない人(採集の同行者など)が多数著者に名を連ねている例などは,見ていてあまり感心しない。

同好会誌の目次にずらりと並んだ市町村単位の1種だけの短報、著者の数が異様に多い水生昆虫の短報、・・・。そう感じていたのは私だけではなかったようだ。

 

 それにしても、こういう報文を書くにはとても勇気が必要だったはず。そして、この報文を載せられる雑誌もそう多くはないはず。レベルが高い神奈川昆虫談話会だからこそできることだと思った。

ウラナミアカシジミ羽化

先月、東京都青梅市で見つけた幼虫から本日羽化。里山の雑木林で普通に見られる蝶のひとつだが、これまで意外と縁がない。東京都産は初めてとなった。

 

羽化殻。蛹は透き通った薄い緑色でとても美しかったが、撮影し忘れていた。

 

現地で撮影した幼虫。コナラ伐採木の上を歩き回っていた。

青梅の里山2026

4月17日はクリストフコトラカミキリを狙って、東京都青梅市の里山へ。清々しい新緑の雑木林を散策し、林縁で見つけた新しい伐採木に期待が高まったものの、結局姿を見ることはなくタイムアップ。ポイント移動の合間に植物を少しじっくり見て、カイガラムシ類やアザミウマといった微小昆虫で少しだけ収穫あり。


クリストフコトラカミキリといえば、カミキリ屋となるきっかけとなった思い出の虫。山梨県では結構出会っているのに、東京都では相性が悪いのか一度も遭遇したことがない。次こそは。